デザイナーの木田淳子さんとの対談記事です。
~デザインという形で伝える想い~
こちらは第二部です。
第一部はこちら
>デザインという仕事
ぱんだ:デザインのクオリティも高いんですけど、製作過程の基準というのもかなり高いと思うんです。
やっていて正直しんどくはならないのですか。
木田さん:しんどいです。自分を追い詰めるというか禅問答のようになってくるというか。全部の要素を入れたいけどごちゃごちゃするからこれを省いた方がいいかとか、これを省いたら物足りないんじゃないかとか、お客様に言わずに勝手に悩んでます。
ぱんだ:例えばその禅問答が自分の中で行われるくらいしんどくなっているのを、今後もずっ と続けていくんですか。
木田さん:精神力がもてば。
ぱんだ:その極限に追い込む、もしくはその極限に入ることによって木田さんの中で、脳が驚異的な活性をしてデザインの神が舞い降りるような感じがして形に表せるからそうするのか、ただ趣味的にやってしまうのか、どうなんでしょう。
木田さん:そんなドMみたいな笑
そんなこともないし、ゾーンに入るということもないんですけど、多分ロジカルに考えていってるんじゃないかなという感じです。
ぱんだ:ロジカルに考えてとった行動が、結果的に自分にとってはしんどいんだけども基準高く、そして完成したデザインのクオリティも高いのを維持するのに役立っているですね。
木田さん:そうだと思います。絶対な答えはないし、お客様の反応とか気に入ってもらえるかということ次第なので、自分がやりきったと思っても結果が伴うかどうかはいつも分からないので、なかなか積み上がらないと言うか、経験が生きるのか分からない仕事だなぁとは思っています。
ぱんだ:毎回初心というのは、当たり前に自分の中で起こることなのか、それとも自分で意図的にリセットしてそういう風にもっていくんですか。
木田さん:意図的にしてないんですけど、いつもすごく初心の気持ちで条件などを読みながら考えています。
ぱんだ:デザインしている時はしんどいのもあると思うんだけど、例えばそれに没頭している時ってすごく幸せだったり楽しいとか何かそういう感覚はやっぱりあるんですか。
木田さん:ゾーンに入ったみたいな感じになると、ふと3~4時間経ってたりすることはあります。ハッと気づくと日が暮れていて、ご飯作らないとみたいに時間が飛ぶときはあります。
ぱんだ:それが当たり前に起こるから自分では普通だと思うんですけど、その作業時間とか気づいたら夕方になってるとかというのはなかなか体験できない人は多いと思います。
木田さん:そうなんですね。資料とか読んだり、この形がいいかあの形がいいかってやっていて、わってそこで入り込んでいると瞬きもあまりしてないんじゃないかみたいな感じで、全然立ち上がってもないし、あまり息してないかなっていう感じです。
ぱんだ:そういう仕事への関わり方で、いつも聞くたびにめちゃくちゃ忙しいですよね。それは受けてる仕事の件数が多いからだと思うんですけど、それプラス家庭の事とかもされていて、バランスは取れるものですか。
木田さん:バランスは取れてないです。
ぱんだ:取れてなくてもそれでやっていけるのか、できれば取れるといいなと思っているのかどうなんでしょうか。
木田さん:取れるといいなとは思っています 。
ぱんだ:思ってるけどなかなか取れないことが多い。
木田さん:はい。
ぱんだ:今ちょっと仕事いっぱい入っちゃって忙しいじゃないですか。 受ける量を減らして自分の時間を取ろうとかはあまり考えないんですか。
木田さん:そうしてるはずなんですけど、急に展覧会のチラシがとか言われると受けてしまうという感じで、なかなか断れない。 せっかく言ってきてもらったしな、お応えしたいなと思って応えてしまうという感じです。
ぱんだ:どういう状況であっても、受けたものは高い基準と高いクオリティで製作しますよね。
木田さん:できればそうしたいと思います。
ぱんだ:ここだけの話なんですけど、手を抜いてやろうとかいうのは湧いてこないんですか。
木田さん:抜いてやろうと思うなら引き受けないと思います。
ぱんだ:素晴らしいですね。心が洗われたような気がします。自分の邪さにちょっとうっとなりましたが(笑)、そういうクオリティでずっと引き受けていくことを続けられるのは、ある意味そこの心が強くないと私はできないかなと思うのですが、そういうところの強さというのは木田さん自身は気付いておられるんですか。
木田さん:全然気づいてないです。私は心の弱い人間だと思っています。
ぱんだ:例えば他のシチュエーションではそうだったとしても、殊にお仕事や自分が大事にしてるものに関してはすごく心が強い状態だと思います。
木田さん:多分そこに関してはすごくプライドが高いんだと思います。変なのは出したくないとか中途半端なのは嫌だとか。よくテンプレートでやればいいじゃないかって言われるんですけど、テンプレートでやるぐらいならもうこの仕事はしないと思っています。
ぱんだ:そういう木田さんだからこそ信頼して、リピーターの方もいれば、自分の中にあるものをちゃんと形にして欲しいという人達が依頼されると思います。
木田さんにとって、デザインとして形にしていくというのはどういう価値があるものなんですか。
木田さん:幼稚園ぐらいの時は絵を描くのが好きだったんです。大きくなるにしたがってお題があるほうが、例えば中学生で歴史とか時の流れとかテー マがあってポスターを描くというのはすごく楽しいと思いました。
漠然と「今私が私は水玉が好きです」と言ってずっと水玉を描く画家の方もいると思うんです。私にとってはその都度、大喜利じゃないですけど向こうからお題が来て、それに最適な解を出すのはパズルとかクイズのようで面白いこともあって、それにずっとハマってるんじゃないかなと思います。
ぱんだ:じゃあデザインへの思いとか興味とか探究心というのは、ある意味尽きることはない?
木田さん:こういう切り口があったかとか、そういうのがあるという点では尽きることはないんじゃないかなと思います。
ぱんだ:先ほどテンプレートでやればいいじゃないかという表現があったんですけど、実際そういう形でされている方もたくさんいると思うんですよ。 それを採用しないのは、それやるぐらいだったらこの仕事を辞めるということなんですが、万が一の世界でもし今の仕事を辞めたらどんなお仕事がしてみたいですか。
木田さん:この仕事を辞めたら・・・何だろうな。歌ったり踊ったりするような、体を使ったりする仕事ができたらなと思います。
ぱんだ:歌う踊る、体を動かすことで何か伝えたいとか表現したいことがあるんですか。
木田さん:表現する人がすごいなと思っています。それは教えられるということではないんですけど、関われたら楽しいかなとは思う。
ぱんだ:今おっしゃっていることを聞いていると、デザインに対して思っているものと共通しているところがあります。
木田さん:そうだと思う。
ぱんだ:どちらにしても何かを形に表したり伝えたりそうすることで、人に喜んでもらったりすることが大事なんですね。
木田さん:喜びだと思います。
ぱんだ:「喜び」。また私にとっては印象深い言葉なんですけど、喜びの内容をもう少し広げて聞いても大丈夫ですか。
喜びって言葉で言うのは簡単ですよね。どういう要素が揃っていたらこれが私の喜びと感じられますか。
木田さん:美しさとかもだし、相手に求められているものをちょっと上回り続けたいとか、それを見て喜んでもらえる、喜んでもらったなとか、その人以外の人にもぴったりだねとか言われてるのを見ると、じわじわと嬉しいという感じです。
ぱんだ:それが喜びと表現されていたことなんですね 。
お客様が求めているものを少し上回りたいというところについてお聞きします。相手が持っている価値をある程度分からないと、その価値を上回ることはできないと思います。木田さんの中では価値と思って見てないかもしれないものを、どうやってそれを感じ取ったり知ったりして、これだったらこうすると上回れるというふうに持っていけるんですか。
木田さん:何かを読み取ってるんでしょうねって感じなんです。その人の雰囲気であるとか、持っているものとか発言とか、こういうの大事にしているんだなとかいうのをベースに、それよりもう少しこう、みたいな感じです。
気をつけなきゃいけないのは、自分でその人の価値を決めつけてしまうとか、上回るというのをこの辺でいいなと決めるのはよくないということです。
少しじゃなくてもっと上回ってもいいとか、もっと角度を変えてもいいっていう考えもあると思うので、ちょっとかけ離れたものも提案してみたりして3パターンぐらい見てもらう中で選んでもらいます。
続きはこちらです。
アーティスト対談一覧記事はこちらです