彫刻家の長谷川寛示さんとの親子対談記事を三部に分けてお届けします。
~自分で選んだものだからこそ責任を持つ~
こちらの動画を文字起こししたものです。
合わせてご覧ください。
ぱんだ:三越展示会が終わりましたけど、やってみてどうでしたか。
長谷川寛示: 今回は個展じゃなくて二人展だったので、普段の制作とはちょっと違う方向で、コラボレーションという形でやってきたので、難しいところはあったけどとりあえず終わってほっとしているという感じかな。
ぱんだ:どういったところが難しかったですか。
寛示:その作品のゴールと言うかここで完成と言うか、この作品のコンセプトはこうだという、ものを作っていく上での芯になる部分というのは一人でずっと作っていけるけど、コラボレーションとなるとそこにもう一人の意見も加わってくるから、自分の裁量だけでは組み立てていけないという難しさがあるかなと思ってます。
ぱんだ:コラボとか、自分と全然違う人と関わることによって、スポーツだとミックスアップするとかという表現をするじゃないですか。芸術、アートではそういうのは生まれにくい?
寛示: ミックスアップあるし、普段一人で制作しているのとは違う化学反応みたいなものはあるけど、どうかな。ミックスアップね・・・
ぱんだ:普段と違ってそこは、勉強になったんですよね。
寛示:勉強になったし、基本的にはずっと一人で制作しているから、たまにはそういういつもと違う人との関わりというかコラボレーションがあると、新鮮だし楽しいこともある。 反面、やっぱり自分一人で進められないという意思疎通のタイムラグもあるし、ここで自分として はこっちの方向で進めたいけど、二人で折り合いをつけるなら、もう少し違う形で落とし込んだ方がいいなとか、そういう難しさもあるって感じ。
ぱんだ:寛示的には、今後もコラボみたいなものをやっていきたいか、しばらくは自分一人で没頭したいかと言ったらどういう感じですか。
寛示:今年(2021)は春に3月4月にかけて二人展を東京でして、今回名古屋の三越でまた二人展を9月末にして、来年(2022)の春にまた東京で3人展があって、そこまではもうちょっとコラボレー ションは続くけど、一回外で刺激を受けた分、もう一度自分の制作に向き合う時間がそろそろ欲しいとは思ってきているかな。
ぱんだ:個展であったり、展示会に出すものっていくつか決まってるやん。 それとは別に自分の中にあるものをストイックに追求して、自分で作品を作るというのもまだやっていく?
寛示:展示に向けて作るとかそういうこともあるけれど、自分の制作として進めていくというのが基本的なスタンス。それを展示というパッケージにしていくとか、今回だったらコラボレーションっていうことで、新しい作品は作っていきます。その時にコラボレーションで他の人との価値基準と照らし合わせながら進めては行くけど、その中でもやはり自分の作家性であるとか作品の軸みたいなものは、いかにぶらさないようにコラボレーションしていくかみたいなところは結構考えていて、 そういう意味では自分の制作と地続きではあると言うか。
ぱんだ:展示会とか、テーマは決まっているの?
寛示:テーマは自分で決めている。例えば間にキュレーターって、展示を組み立てる別の人がいるとかそういう場合は自分で設定はしないけど、今回のコラボレーションにしても、個展の時にしても、特にキュ レーターが間に立たない展示は、全部自分たちでコンセプトから組み立てていくと いう感じ。
ぱんだ:例えば作品を作る、木を彫っていくとかだけど、作るということと、見せるとか知ってもらうというのは全然別のものやと考えるけど、寛示の中ではその辺はどういうふうに考えてるの。
寛示:基本的には作ることがメイン。ただ一人で作り続けるかと言うと、やはりそこには他の人に見てもらって刺激を受けるとか、他の人の作品を見て刺激を受けるとかということもあるし、そういう意味では分けて考えることはできない。だけど常に自分で考えてものを作っていくということは軸にはなっているから、人に見せるとか人に喜んでもらうということも考えつつではあるけど、やっぱり基本的には自分の製作というところを常に考えているかなと思う。
ぱんだ:パッケージングで聞きたいんやけど、自分をパッケージングするとかプロモーションしてい くっていうのは今後必要やと思うねんけど。
寛示:自己プロデュース的なもの?
ぱんだ:そうそう。それは今どう考えてる?
寛示:考えてはいるけど、上手くないから素直にやっていくしかないかなと思ってる。
ぱんだ: 自分の中ではプロモーション・セルフプロデュースをうまくやってる、うまくいっているなと思うアーティストはいる?
寛示:いるいる。でもそれは、プロデュースされた誰かを演じていくというようなことではなくて、いかに嘘をつかずに素直なままアーティストとして活動していけるかというところに注力してる人、という感じ。
そういう人は周りにいっぱいいて、無理して作家性を作っていくというよりは、本当にそのまんまで見てくれた人に作家性とか作品性が伝わるような努力の方向と言うか。
ぱんだ:すごい商業的に成功している人とかっているやん。寛示から見て商業的に大成功してる人というのは、寛示が言ってたような、嘘をつかずに正直にというところもやれてる人っている?
寛示:いるいる。いろんなタイプの人がいるから一概には言えないところはあるけど、基本的にはやっぱり、自分の生み出すものに責任を持つというところはみんな。
自分の周りで尊敬できるような仕事してる人たちの中には、そこを外してる人は逆にあまりいない。
ぱんだ:尊敬ってどこから湧いてくるの。 その人の何を見て尊敬に値するっていう風に感じる?
寛示:やっぱり作品は大前提かもしれない。
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