ぱんだと各界で活躍されている方々の対談動画・記事を公開しております。
ソーシャルワーカーをされているYさんにお話を伺いました。
三部に分けてお届けします。
前話はこちらです
>第一部
ぱんだ:発達障害の人のトンガリは個性によって違うと思いますが、才能・ 強みのようなものであることが多いのか、特にそうではないのか、どうでしょう。
Yさん:強みになるかならないかというのは分かりません。 一見強みではないものも、世の中が変わってきているので、10年20年前とは 違います。昔であればマイナスだったことが、活かせるものになるかもしれないという目で見るのも大事だと考えています。自分の価値観で見る強みと、それを極めた時にどうなるかは違うと思います。そして世界がどう見るかとも違うと思います。強みとは何かがわからなくなります。
ぱんだ:時代や社会情勢が変わるとこれまで強みだったものがそうでなくなったり、これまでのスタンダードが新しいものに変わる、そういう面もあります。
尖っている部分を叩かれ続けて、尖っていれば強みとして働くものが弱み化するとしたら、もう1度尖り直したら強みとして働くと私は考えます。 尖っているところを見つけて活用できるところが分かれば、分かった時点で強みを活かす場に行き着いたということになるだろうし、個人を理解してくれない環境にいて叩かれ過ぎてへこんでいるとしたら、理解されるという状態におくことで尖り直していけばいいと思います。
Yさん:ゲームのコアでディープなところを物凄く知っている子がいますが、家では誰も聞いてくれない。私は知らない世界だったので凄いと思って、その話題に食いついて聞いたら溢れるように教えてくれて、相手がどんどん元気になりました。
尖ったところを良いと言ってもらえるとそれほど元気になるのかと思いました。尖り直すということが強みにしていけるというぱんださんの言葉が納得できます。
ぱんだ:尖り直すことで、本来活かすと良いところが活かせるかもしれません。例えばYouTube で、それを1日5分10分位で発信していくと好きな人が 聞いてくれるかもしれません。1対多数 のコミュニケーションでも、動画を介してなら人付き合い苦手というのも回避できるかもしれないですよね。
Yさん:対面では何を言っているかわからなくても、配信になると流暢に喋ったりする人もいるんです。能力だと思います。喜ばしいことです。
ぱんだ:興味を持った人が話を聞くことで、持ってるものをどんどん出してきて、それが喜びに変わり尖り直していくということを、たくさんの人にやっているのがソーシャルワーカーの仕事ということですね。
Yさん:それも重要な仕事として含まれています。自分の安定のためにも 変化を見て行くのが好きな部分。
それ以外は、生活環境を整えたり 制度の利用方法を教えたりとか好きではないけれど大事な仕事です。そればかりをしていたら楽しくなかったと思いますが、コアなところへの関わりで気づくことがあるのでやれるという感じがしています。
ぱんだ:話の初めに出ていた人間関係・家族関係へのサポートという面においてはどのような形で関わっているのでしょうか。
Yさん:親子の関係がまずいという状態が多い。
親御さんが理解できないのは当然だと思いますが、言ってはいけないことを言ってしまったりして、本人の病気がぶり返すということがあります。ご家族に説明したり話を聞いてガス抜きをするという役割もします。 色々な機関が色々な面からサポートをするので、家族会・家族教室のようなサポートを受けたりもします。距離のある親子ならいいですが、密接だと本人だけが良くなっても家族によってそれを阻害されるということが多いので、そういう問題があるときは直接話をすることもあります。
ぱんだ:随分前に聞いた話ですが、アルコール依存ギャンブル依存の人がいる家庭というのは家庭病という表現をする人がいました。家族や家庭で依存症というものを先延ばしにしてしまうんですが、構造的に似ていると思います。
本人は一定期間じっとしていることでエネルギー・活力が溜まってやる気になってそろそろ動けそうと思った時に、いいタイミングで親御さんが何か言 ってしまう。3ヶ月とか半年かけて貯めてきたものを、もうちょっとというところで壊されてしまうと、ソーシャルワーカーという仕事で関わると速やかに回復するのか、やはり3か月半年という長期間かかるのか、どうでしょう。
Yさん:アルコール依存も精神障害の対象です。勤務していた病院では本人の3ヶ月プログラムと、本人が回復して帰ってから再発することがないように、家族教室をやっています。アルコール依存に対する正しい知識がないために少しだけならいいなどの勘違いや間違いを正します。 家族関係がうまくいっていないなど、長年積み上げてきたマイナスのところをなかなか改善できず、3ヶ月で退院して良くなるということのほうが少ないです。
ぱんだ:アルコール依存や薬物依存はプログラム終了後一生続くものですか。
Yさん:ずっとやめ続けなければいけません。
ぱんだ: 本人と家族や周囲の関係は難解なパズルのような気がします。ソーシャルワーカーという視点で、いつか解くことができるパズルなのか、7割解けたらまた元に戻ることを延々続けるのか、どう見ますか。
Yさん:アルコール依存が一番難しくどうしたらいいのかと思っていました。既に結婚して家庭があることが多く、分離することが難しいというのが 前提にあります。そこでの関係が悪いので良くなったり悪くなったりを繰り返す。最終的に離婚するケースが多く、そうするとうまくいくということがパターンとしてありました。
ぱんだ:2、30年前に両親のどちらかが依存症であると、アダルトチルドレンと評されるように育つということが言われました。
生き方につまずいている人、天職を探し続けている人、なんとなくお金に困っている人は傾向として同じような構造を使っているように思っています。 生まれ持った自分の強みを活かせる天職を見つけたいと言って仕事を辞めてしまう。親からお小遣いをもらっている。天職を見つけたければ家を出て自立してくださいと言うが絶対にやらないです。
Yさん:共依存というようなことが起きている。
ぱんだ:その言葉で済ませていいのかわからないけれど、親もいつまでも面倒見られないし、自分たちも蓄えが必要だから早く出て行ってほしいと強く思う反面、一人娘だから心配だとか悪い人に騙されないか、どこかで借金をしないかと考えたら何もできない。極端な思い込みを持っている人は意外といると思いますが。
Yさん:確かに極端ですね。
ぱんだ:色々な極端があるけれど、突拍子もないことが親や本人の中にあり、そこだけ共通していたりする。あれだけいがみ合って喧嘩しているのに、そこだけは一致するのかと思うことがある。両親や親戚など、子供から大人になる中で当時の大人の誰かに刷り込まれたものを持っているからそうなるのかなと思います。
アルコール依存症もそうですが、発達障害、精神障害という家庭や家族のつながりを見ると似ている気がします。
Yさん:その人だけがおかしいということはあまりないです。
ぱんだ:アルコール依存も、その人がお酒を飲むのをやめ真面目に働くようになれば皆が救われるという錯覚をしていると思うんですが、なぜそれが起こるのでしょう。
Yさん:そもそもなぜその人と結婚したのかという所に行きます。客観的に見るとお酒飲んでどうだこうだと言っているけど、奥さんもそれを助けてますよねと思う。傍から見ると引き合っています。家族全体で見ないと駄目だと思う。
それぞれの育ってきた経験や環境をたどると共通しているものがあるのではと思います。
ぱんだ:依存の傾向や障害の度合いが強い時は、今顕著に現れている本人だけでなく周りの家族などを含めてみていかないと動いていかないと思っています。
Yさん:その人だけを見ていても駄目というのは業界として共通です。私もそう思います。
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