映画監督 横川寛人さんとぱんだの対談動画・記事です。
(*2021年8月の対談です)
記事は三部に分けてお届けします。
こちらは第三部です。
第一部:俺は映画監督になる!
第二部:監督7つの誓い 仕事の流儀
第三部:愛ある限り撮りましょう! <今ご覧いただいている記事です
ぱんだ: 『大仏廻国』と『ネズラ1964』どちらも拝見しました。 『大仏廻国』を観て思っていたのは、ラストの方で今の現実にすごくフィットするような気がしました。日本の中では割と平和な感じでいるけれども、 環境問題や経済的な格差であったり、世界では紛争はたくさんあって不穏な ものが動いているけれども、気づかなかったり見てても知らんふりしてるのが今の人たちなのかなと思っていました。諸行無常な感じもあるけれど、自分の中で何か見直した方がいいのか、ふと感じさせるようなところもありました。
監督自身が、作ってる時ではなく完成した作品を見た時に何か感じたことがあれば、少しお聞かせいただければと思います。
横川さん:『大仏廻国』が初めての映画ということでなかなか予定通りにいきませんでした。物語や脚本、撮影のスケジュールが全然うまくいかなかったので、撮りながら物語を決めていきました。
実は俳優の宝田明さんがこの映画に登場します。最初と最後に特撮映画のあ るべき姿を語ってくれるシーンを撮影した時に、「映像を作っている者は、今日本や世界で起きてること、戦争や震災や社会問題などを映像世界で残さなきゃいけない」って言ったんです。それを聞いた時に「あ、この大仏廻国もそうしなきゃいけないんだ」って思いました。
それで最後に日本が大変なことになっても、主人公は起きてる状況をとにかく残そうとパソコンに向かって映像編集をするというシーンを、宝田さんの 撮影の後に付け加えて撮ったんです。
編集して映画で見た時に、後にこの作品を観る人たちにとってこの映画もそうなったんだと思いました。映画監督を目指している者、映像を撮っている者、それ以外のアーティストとして作品を作っている人たちは今起きているそういった状況を作品に収めていかなきゃいけないいと思ってもらえるんじゃないかなと思います。
ぱんだ:宝田さんの語りは、熱弁を奮うわけではないけど迫るものがあって心に沁みてきました。彫刻や絵画もそうですが、作家がどういう意図をもって作っているのかを聞いてから観るとまた違うと思います。今お話を聞いて次に見直したらまた違うものを感じられるのかなと思いました。
『ネズラ1964』ですが、実際にネズミを使って撮影現場がハードでしたよ ね。時間をかけ精魂かたむけて作ったものが結果として撮影中止になって、 主人公がセットを壊しながら泣くシーンを観て、不覚にも一緒に泣いてまし た。形は違えどわたしも作り上げる仕事をする者なので、自分の身に起きた ら暫くへこんでだめだろうなと思ったからです。あれは意図があって演技と してセットを壊して叫ぶことを指示したのか、あの瞬間ああなったのか、どちらなんでしょうか。
横川さん:『大群獣ネズラ』は、ミニチュアに生きたネズミを放って巨大な怪獣のように見せる撮り方でした。ゴジラなどの怪獣映画の印象としてはミニチュアは壊れるものですよね。
『ネズラ1964』ではミニチュアの建物や高速道路を撮ります。美術監督に「ネズラではミニチュア壊れないんですよねぇ」って話した時に、「自分が作ったミニチュアが壊されて初めてそれが完成なんだ」って言われて、ミニチュアとして完成しないなぁって思いました。
それならちょっとシーン足しちゃおうと、美術監督にミニチュアは最後に壊 してもいいか聞いたら、壊す前提で作ってないので壊す用のビルを作りましょうって言ってくれました。それでこの映画では怪獣ではなく劇中の映画監督がビルを壊せば、本人は悲しんでるけど作品自体も怪獣映画としては完成しちゃう、それは面白いじゃんっていうんで、そのために急遽作ったシーンなんです。
石膏ビルっていうんですけど、壊しやすいように後ろに切り込みを入れてちょっとした振動で壊れるビルを作ってもらいました。
ぱんだ:それもまた次に見るのが楽しみになるお話です。壊すことで完成するんですね。
横川さん:美術監督がぼそっと言ったのが凄い印象的で、じゃあ壊そうと思ったのがきっかけですね。
ぱんだ:滅びの美学じゃないけど、壊すことで完成する美しさを知った気がします。
横川さん:その美術監督も壊されるシーンの時、「これじゃないとね、やっぱり」って言って喜んでました。
ぱんだ:いやあ、知らない世界です。
ぱんだ :怪猫って聞くと年齢的に佐賀鍋島藩の化け猫シリーズしか思い浮かばなかったんですが、今回ここにスポットを当てたのは、さきほどお名前が出ていましたが…
横川さん:『大仏廻国』も『ネズラ1964』も自分の企画ですが、『怪猫狂騒曲』は作曲家の渡辺宙明さんから連絡がきたのがきっかけです。 渡辺宙明さんは前作のネズラのエンディング曲を作って下さった方です。ゴ レンジャーやマジンガーZ、サザエさんなど皆んなが知っているアニメ作品や特撮作品の作曲家でレジェンドな方です。
アニメや特撮音楽の前に銀幕デビューされています。それが化け猫映画の音楽制作で、映画音楽制作のきっかけです。今95歳なんですけど、原点回帰の化け猫音楽を作りたいっていう依頼が僕に来たんです。
最初聞いた時に、1950年代に夏の風物詩みたいに盛り上がっていた化け猫映画や入江たか子さんを今の人は知らないと思って、そういう古き良き作品が あったことを皆んなに知ってもらうのは大仏やネズラに続くコンセプトです。
それに渡辺宙明さんは当時音楽を作っていた張本人ですし、その方が70年の 時を経て音楽を作るのはなかなか面白いんじゃないかと思って企画した作品 です。
ぱんだ:クラウドファンディングのページを拝見しましたが、映画と音楽のパ ートが交互にということですが、これは何か意図することがあってこういう 形にしたんですか。
横川さん:2021、22年という現代は、当時とは違って色んな映画が量産され尽くしている状況で、映画の流行りやイメージもあります。鍋島の化け猫騒動の映画をただ当時のように撮るのはちょっと違うんじゃないかと思いました。『大仏廻国』も、昔大仏が街を歩いた凄い映画がありましたって言う時に、現代でそれを表現する時には何で大仏が歩くのか理由が必要になります。
渡辺宙明先生が音楽をやるのなら、それを大々的にみせた方が作品コンセプト としては意味があると思いました。
オーケストラを率いて当時の化け猫映画を彷彿とさせる演奏をしてもらって、そのコンサートを撮っちゃおうと。コンサートだけで映画が成立つかっていうとそこは違うと思ったので、当時の化け猫騒動の映像をインサート的にはめ込んでいって、パートが違うオムニバスみたいな、そういう作品にしちゃおうっていうのが今回のコンセプトです。
ぱんだ:完成を楽しみにしています。こちらは6月からクラウドファンディングがスタートしていますね。
横川さん:はい。クラウドファンディングは2021年9月まで、撮影は10月からの予定です。
ぱんだ:リターンがDVDとかCD、映画出演権もあって、うちも家族総出で出たいと思ってたんですけど。
横川さん:高校時代のように、自分の映画に興味を持った人に出てもらいたいっていう気持ちが今でもありまして、それでリターンの中に映画出演権があるんでしょうね。
ぱんだ:映画に出られるってなかなかないことです
横川さん:普通の映画はエキストラ撮影は映るかどうかわからないんです。最終的にカットされたりすると思うんですけど、ぼくの映画のクラウドファンディングの出演権では絶対に映りますので。
ぱんだ:わたしも小さいながら会社を経営してますので、作中にロゴマークが登場するっていうのも気になってるんですけれども。
横川さん:ロゴマークや会社の一番目玉商品が劇中に出るとかそういったこともできるようにしてます。
ぱんだ:うちの会社の目玉商品はわたしなので、わたしが出るっていうのもオッケーなんですね。
横川さん:もちろんです。
ぱんだ:事務局はたぶんロゴマークにしといてくださいって思いながら聞いてると思いますすけど。
ぱんだ :子供の時から好きだった特撮が、今結果としてお仕事として映画を制作するというところまできています。何かが好きでも諦める人もいるけれ ど、横川さんは諦めずに続けてこられました。それと自分やみんなをパッケージングすることも考えてやってきたから今があるということですよね。その辺りの体験も踏まえて皆さんにアドバイスと して何かお伝えいただけますか。
横川さん:何十年か前だったら、自分が何かになりたいとか将来の夢は叶わない可能性があったと思います。今はインターネット時代グローバル時代でSNSとかを簡単に利用できるようになったから、100%に近い確率で夢は叶うんじゃないかと思っています。
例えばiPhoneで動画撮って、簡単な編集ソフトがあるからそれでまとめてYouTubeに上げて、自称映画監督って言えば本当に映画監督です。パン屋さんや花屋さんになりたい人も、プラットフォームがあるはずなので、なりたいなってふと思ったことは案外すぐ近くにありますよって言いたいです。
ぱんだ :ありがとうございます。ご覧のみなさんはやりたいことなりたいものがあったら、できないとか諦めるんじゃなくて、できる方向を見つけてやっ ていただけたらと思います。個人的にも聞きたいことがまだまだあります。また機会がありましたらお話を聞かせていただけたらありがたいと思います。
今日のトークが、みなさんが今を生きるヒントであったり今から作る未来になにがしか役に立てば私たちも幸いでございます。今日はありがとうございました。
横川さん:ありがとうございました。
*『怪猫狂騒曲』クラウドファンディングは大成功で終了しています。
(2021年8月の対談です)
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