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アドラー心理学の特徴/長谷川理恵さんインタビュー第一部

アドラー心理学の特徴/長谷川理恵さんインタビュー第一部

 

開業保健師をされている長谷川理恵さんに

アドラー心理学について、お話をお聞きしました。

 

三部に分けてお届けします

 

■ アドラー心理学の特徴『長谷川理恵さんインタビュー』第一部

■ 人はなぜ心理学を必要とするのか『長谷川理恵さんインタビュー』第二部
■ 今後の抱負『長谷川理恵さんインタビュー』第三部

 

 

ぱんだ:本日はありがとうございます。早速ですが自己紹介をお願いします。

 

長谷川さん:長谷川理恵です。『Being Prem』を主催する開業保健師です。
ぱんだ:どのような活動をされていますか?

 

長谷川さん:研修の講師が主です。依頼された研修に対してプログラムを作って提供します。カウンセリングやスーパービジョンもします。

 

ぱんだ:講座は依頼の都度、作るんですか?

 

長谷川さん:はい。他者を支援する仕事をしている福祉関係の職員さん、保健師さん、保育士さんなどのいろんな要望に合わせてプログラムを作ります。
プログラムを作るのはわくわくします。全く初めてのことを依頼されることもありますが、依頼の目的を聴いてみるとできそうだなと思うことが多いです。

 

ぱんだ:システマティックなものを構築したりはしないんですか?

 

長谷川さん:そう遠くないうちにオリジナルのプログラムを作って出そうと思っています。今までに提供したプログラムの中で好評だった部分には共通点があるんじゃないか、そしてそこにニーズもあるだろうと思いました。それがきっかけです。

 

 

アドラー心理学の特徴

 

ぱんだ:理恵さんはアドラー心理学を長年学ばれて、実践もされていますが、アドラー心理学の特徴を教えていただけますか?

 

長谷川さん:アドラー心理学でわたしが一番好きなのは、人と人とが横の関係で繋がって、対等な信頼し合える関係を築けると信じているところです。人々が戦ったり争ったりするんじゃなくて、助け合ったり補い合ったり協力する社会を築く能力が誰にでもあって、そうやって社会や世界を作っていくことを、アドラーは望んでいました。

 

アドラー心理学というと、「勇気づけ」などその理論や技法に注目が集まりますが、それは何のためかというと、大人も子どもも、男も女も、どこに住んでいても、ちゃんと所属できる水平な社会を作るためなんです。

 

ぱんだ:例えばその「勇気づけ」というそこだけをみた時に、今までの経験から勇気づけが人に及ぼす影響をどう捉えていますか?
長谷川さん:勇気づけについては最近また議論があるところではあります。わたしは幼児のおかあさんおとうさんたちには、こどもの心の中に「できる」と「なかま」というふたつの心を育むことを伝えます。そのふたつがあると「協力」と「貢献」が起きます。

 

それがまさしく、アドラーが言っている社会の実現に繋がる人々がそちらへ向かう、その勇気を育むと思います。

 

 

ぱんだ:『勇気』って一体何でしょう?

 

長谷川さん:アドラー心理学の文脈では、「自分がやめたくても皆のためにやろう」と決めたり、「自分がやりたくても皆のためにはどうかな」と考えた時にやめるなど、皆にとってどうかなと考えながら自分の行動を決める態度、それが勇気だと考えるといいんじゃないでしょうか
ぱんだ:他人を慮って自分の感情を抑えたり、怒りを爆発させずにその場を堪えるっていうのも、個人レベルでは勇気って言えますか?

 

長谷川さん:そうですね。でもなんでもかんでも自分を抑えて我慢するだけは勇気じゃないですね。そんな時には自分が本当は何を望んでいるのかをきちんと考えたり、相手の人がどんなことに関心をもっているのかに目を向けながら、すり合わせていくことが大事です。
ぱんだ:折り合いをつける擦り合わせるというのは、やってきた経験がないとわからないですよね。自分はむやみに我慢してるんじゃない、今はこれを言うより全体のために抑えようという心を育てていく初歩の初歩には、何に気を付ければいいですか。

 

長谷川さん:アドラーも言ってますが、「育児」と「教育」が大事ですこどもが育つ中で、自分の話を十分に聴いてもらう経験がベースにあることが大事です。

 

ただ意見が通るのではなく、小さい時から話し合いがしっかりできるといいと思っています。人は語りながら考えると思うんです。本当にこれが自分の望みなのかということも、言葉にして表さないと考えられないんじゃないかな。だからその人の考えを言葉にするのを助けるという意味で、聴くことが大事です。

 

 

ぱんだ:わたしも、一人で考えていると頭の中で思いや言葉がぐるぐる回るだけだから、とにかく言葉を書き出してくださいって言います。文章として成立しなくても、自分の頭の中を巡っていた言葉を繋げていくと、ある程度整理できると思います。

 

親子のコミュニケーションが良好だと話を聴いてもらえるし語れるし、親の言っていることも理解しようとすると思います。でもそうじゃない環境で育った人が大人になって、自分の思っていることを言葉にしたり考えることを身に着けようとしたら、何に気を付けると自分を向上させられるんでしょう?
長谷川さん:家族が難しかったとしても、家族以外の大人、保育士や先生、お隣のおじさんおばさんなども子どもの話をちゃんと話を聴こうと思ってくれるといいなと思っています。それは成人したひとに対しても同じです。小さい時に話を十分に聴いてもらえなかった人がどうしたらいいかというよりは、そういう人も含めて誰もが人の話をちゃんと聴こうと思ってくれるといいなと思うんです。

 

話すだけでなく、人の話を丁寧に聴くと、相手の考えを知る一方で自分はどう思うのかということに気づいていきます。大人は特に自分の思いを知ることに繋がっていくと思います。

 

ぱんだ:わたしも、自分の思っていること考えていることを知るのはとても重要だと思っています。知ったら次にどうしたいかを考えて、自分で選んで決めていく、決めたことをやってその結果を精査していく。これを繰り返して人は成長していくと思うんです。
長谷川さん:本当にその通りだと思います。

 

 

ぱんだ:『人の話を聴く』時に、自分の経験に置き換えて聴く人が多いように感じていますが、最初はとにかく聴くという姿勢があればオーケーですか?

 

長谷川さん:そうですね。まずは、自分の意見を挟まずに最後まで聴いて欲しいです。

 

ぱんだ:話を聴くこと以外にも、いろんな人の小さな動きが集まると、結果として大きく社会を動かしたり貢献できるような形に変わっていく。アドラー心理学が目指しているのは、そういう世界が近いんでしょうか?

 

長谷川さん:そう思います。お互いが助け合うよい社会とはどういうものかを考えながら作ることができるということだと思います。2020年にアドラー生誕150年を迎えました。亡くなってからも80数年経つのです。ずっと生きていたとしたら、言っていることはもっと発展してきたでしょう。だから、アドラーが何を言ったかを知ることはもちろん大事だけれど、何を実現したかったのかということの方がもっと大事だと、わたしは思っています。

 

 

第二部に続きます
人はなぜ心理学を必要とするのか『長谷川理恵さんインタビュー』第二部

 

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