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人はなぜ心理学を必要とするのか/長谷川理恵さんインタビュー第二部

人はなぜ心理学を必要とするのか/長谷川理恵さんインタビュー第二部

 

開業保健師をされている長谷川理恵さんに

アドラー心理学について、お話をお聞きしました。

 

三部に分けてお届けしております。

 

■ アドラー心理学の特徴『長谷川理恵さんインタビュー』第一部

■ 人はなぜ心理学を必要とするのか『長谷川理恵さんインタビュー』第二部
■ 今後の抱負『長谷川理恵さんインタビュー』第三部

 

 

何が人を分けるのか

 

ぱんだ:わたしにはとても興味があって気になっていることがあります。例えばお互いを補い合い助け合い貢献しあって活動する人たちもいれば、競ったり争ったり奪ったりする形で活動する人たちもいます。大きく分けてこの二つがあるとしたら、人の何をもってこの二つに分かれていくのでしょう。前者の中にも性格的に好戦的な人もいたりして、単純に性格などでは分かれないですよね。

 

長谷川さん:勝つために貢献するというタイプの人はいますね。わたしが思うことのひとつは、自分の中じゃないところに基準があるということです。

 

ひとは誰でも不完全で、できているところでもって協力し合うのだと思います。けれども、好戦的な人というのは、いつも何かの基準や他人と比べて自分に欠けているところできないところを探して、誰かと争っていたり、追い立てられていると感じて勝ちたくなったりするんじゃないでしょうか。

 

ぱんだ:それは例えば、単純に自分の中の価値の基準を誤認していたり、生きてくる過程のどこかで2,3回転捻じれてしまった結果、自分の世界観そのものを誤認してしまったというのも影響しますか?

 

長谷川さん:そういうことが大きいと思います。間違っているとは言いませんが、学び損なったとでも言いますか。

 

 

 

ぱんだ:アドラー心理学的には学び損なった人も、新しく学んだり正しく学び直すことで変わっていくと考えますか?

 

長谷川さん:はい。その人も社会の一構成員で、その人が作っている部分もあるでしょう。その人の、社会に向けての目的もあると思います。きっと、そこには大きな間違いはなくて、目的に至るために取っている手続きがへたくそだったり、方法が偏っていたり狭かったり、そういうことじゃないかと思います。

 

ぱんだ:選択肢が増えるだけでもそこは変わっていく可能性があるということですよね?

 

長谷川さん:そうだと思います。それと本当の目的を知るということですね。
ぱんだ:一時期自分探しをしてた人には、本当の自分の目的とか宿命にフォーカスする傾向がみられました。本当の自分だとか、本当の自分が求めているものに気づいていくために、気を付けてみるといいこと心がけてみるといいことが何かあれば聴かせてください。

 

長谷川さん:カウンセリングなどでいろんな人と会ってきましたが、目的と手段を間違えている方が多いです。例えば、先にもありましたが、協力することは手段で勝つことが目的だというのは目的が間違ってるし、その人が本当に実現したいことは別にあるんじゃないかという気がします。

 

本当に実現したいことは何なのかということは、その人の話を聴かないとわからないです。小さい頃の思い出からじっくり聴いたりして、本人が勝つことより大事なことがあったなとか、ああこれだなとつかんでくれたらいいと思います。

 

「本当の目的」という言い方が適切かはわかりませんけれど。それに、そのつかんだものはその人にとって絶対的なものではないかもしれません。また新たに気づいたら書き換えればいいんです。わたしは、そんな時のお手伝いができればいいと思っています。

 

ぱんだ:あくまでも「語る」「聴く」中で思っていること考えていることを知っていくということですね。

 

 

 

人はなぜ心理学を必要とするのか

 

ぱんだ:人って何故心理学を必要とするんでしょう。
長谷川さん:どうしてでしょうねぇ。わたしが最初にアドラー心理学を面白いと思ったのは、その技法です。対人関係のいろんなスキルを知ることで、親子や友達との関係が劇的に変わるのを目の当たりにしてびっくりしました。

 

その後勉強し始めるとアドラーの言ったことの理論が面白いと思うようになりました。人をトータルで見るとか、行動には目的があるなど独特の理論があるんですが、それはアドラーが実現したかった世界をつくるために必要な理論だと思っています。

 

社会統合論という考え方もあります。皆ジグソーパズルのピースのようにひとつひとつは、それだけでは不完全だけれど全体がパチンとはまるときれいな一枚の絵になるように全体としてコミュニティーを作っているという考え方です。人は一人一人が社会に組み込まれてあるけれど、社会が組み入れるのでも、自分が入っていくのでもなくただそういうものだということです。

 

理論といえば理論ですが、思想といえば思想で、わたしはそういうところが好きです。例えば精神分析学に思想はないと思います。そんなふうに思想を持っているのがアドラー心理学の特徴です。このことが、今の社会に必要なことじゃないのかな。心理学が、というよりは思想が必要なのではないかと思います。
ぱんだ:アドラー心理学の背景にあるその思想を、多くの人が知っていったら、例えば20年、30年経った時にどういう社会を期待できそうですか?

 

長谷川さん:人々がいつも笑っている。そんな感じがします。

 

 

ぱんだ:私が小学生くらいの時は、街の小さな店をしていたり自営業をしている人が多くて、にぎやかで、そんなにお金がなくても笑ってる人が多かったと思うんです。

 

どこからか、すごく頑張って働くけど、いろんな意味で自分の思ってる評価と違っていたりするとしんどくなったり、一生懸命生きるけど笑えなかったり幸せを感じにくいっていうひとが増えてきたように思います。これって何が影響してこうなってきたんでしょうか。
長谷川さん:わたしも子どもの頃を思い出してみると、地域がもっと繋がっていたように思います。コミュニティの中での人間関係は子育てにすごく影響します。子育てのしやすい社会は、地域がちゃんと繋がっていて、それは合計特殊出生率にも繋がっています。

 

そういうことが復活するためにはどうしたらいいのか考えています。個人情報保護のような見えない縛りが増えてきたし、お隣にちょっと上がってお茶でも飲むというような風景は見られなくなっています。
ぱんだ:いつの頃からか、自由や権利を行使する人が増えましたが、その割には窮屈になったり不自由になってるように感じます。わたし個人としては、それはどこかで間違っちゃったんだと感じています。そういうことも含めて地域社会がもっとお互いに関わり合ったり気遣い合うようになると、20年、30年経ったらまた社会は変わってくるかな。

 

長谷川さん:わたしたち倉吉のアドラー心理学の勉強会は今年で30年になります。10数年前からは夏に合宿勉強会を開催していて、子どもたちもおとうさんおかあさんと一緒にやってきます。今は中学生になったその子たち同士が繋がっていてアドラー心理学に興味を持ち始めたり、もっと大きな子たちがアドラー心理学を学び始めようとしていたりしています。一緒にいろんな体験を重ねていく中で、暮らしの態度として広がっていくといいですね。

 

 

ぱんだ:こどもはおとながやっていることを見て聴いて覚えていきますね。ずっと昔、家でわらじを編んでいるのや職人のおじいちゃんの仕事を横で見て、10歳くらいになったら見様見真似でできたということはよく聴きましたね。だから親を含めて自分の周りにいる大人が言ってることやってることを、こどもは見聴きして覚えるから、おとながギスギスしていたらやっぱりこどもはギスギスしますよね。
長谷川さん:こどもは本当に早く学ぶと思います。そして大人の言う事ではなく、やることから学んでいると思います

 

ぱんだ:やっぱり大人の側に、子どもの手本になるという概念が必要ですね。

 

長谷川さん:モデルとして、ですね。

 

ぱんだ:おとうさんおかあさんに、こどもにいい影響を与えるモデルになれるように、簡単なアドバイスがあれば教えてください。
長谷川さん:わたしがいつもおとうさんおかあさんにお伝えする「なかま」と「できる」を、おとなどうしで育むことだと思います。自分で自分に「わたしそこそこやるじゃない」、「私たちっていいおかあさん、おとうさんだよね」って言えばいいんです。それに「いい仲間や友達がいてありがたいな」「いいパートナーがいてうれしいな」って。そういうことを日々思って暮らすことが大事じゃないかと思います。
ぱんだ:自分で日々そういうことが思えたり、それを体感して過ごせるっていうのは、内側から心地よさや幸せを発するから、言語より伝わりやすいですよね。
長谷川さん:そうなんです!

 

ぱんだ:わたしも苦虫噛んだような顔はやめてみます(笑)

 

 

第三部に続きます

今後の抱負『長谷川理恵さんインタビュー』第三部

 

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